はじめに

『歩き出す』ときや『階段の昇り降り』などの動作のとき、突然膝や股関節に痛みが走ったことはありませんか?これらの動作は、わたしたちが日常生活を送るうえで避けては通れません。しかし、年齢を重ねるにつれて大きくなる膝や股関節の痛み・・・その原因のひとつが「変形性関節症」といわれています。当科では、骨や筋肉、関節といった運動器の治療を行っています。ここでは膝関節の痛みの治療に有効な人工関節置換術についてご紹介します。

ひざ関節のしくみ

膝関節は大腿骨(腿の骨)、脛骨(すねの骨)、そして膝蓋骨(膝の皿)から構成されており、関節の回りにある靱帯や筋肉で安定性を保つことにより、自由に曲げ伸ばし運動ができるようになっています。また、それらの骨の表面は弾力性があって、滑らかな軟骨で覆われています。軟骨は関節を動かしたり、体重が掛かった時の衝撃を吸収するクッションの役目をもっていますが、年齢を重ねるにつれてクッションの役割を果たす軟骨がすり減り、体重がかかるたびに軟骨の下の骨同士がこすれ合って痛みを生じたり、こわばったりするようになります。

健康な膝関節
関節炎

変形性膝関節症

膝関節に発症する慢性の関節炎です。多くが外傷などの明確な原因がなく、自然に発症してくるもの(一次性)で、レントゲンで関節のすき間(関節裂隙)が狭くなったり、骨棘が認められれば変形性膝関節症と診断されます。比較的女性に多く、年齢と肥満が関連するといわれています。

健康な股関節
変形性膝関節症

人工膝関節置換術について

現在、変形性膝関節症の手術で最も多く行われているのが、人工膝関節置換術です。関節全体を入れ換える手術ではなく、痛みの原因であるすり減った軟骨と傷んだ骨の表面部分を切除して、金属やプラスチックでできた人工の関節に置き換える手術です。痛みの大きな改善と、早期の回復が期待できる治療法です。

手術前(正面)
手術後(正面)
手術前(横)
手術後(横)

当科の特徴

膝関節のバランスをとる手術法(ギャップテクニック)

膝関節は4つの靭帯で支えられており、これらの靭帯は膝関節を正常に動かすために重要な役割を持っています。当科が採用しているギャップテクニックとは、靭帯の緊張を器械で計測してから骨を切除し靭帯のバランスを向上させる手術法で、可動域の改善、長期成績が期待できます。手術時間も1時間程度と短く、難治症例も手術可能です。

真皮縫合で抜糸が不要、傷跡を目立ちにくく

当科では真皮縫合と呼ばれる方法で手術の傷を縫合します。これにより抜糸が不要で、手術後の傷跡を目立ちにくくします。皮膚表面は糸を使用せず、テープを貼ることで皮膚を合せます。

術後1カ月
術後3カ月
術後6カ月

術後経過

入院は2週間程度で、早期の社会復帰が可能です。ただリハビリがもっと必要な患者さんは、リハビリテーション科に転科していただき、十分にリハビリを行ってからの退院となります。低侵襲ゆえに超高齢者の患者さんでも手術ができるケースも多いです。

歩行動画(手術後)

術後1カ月
術後1カ月

正座の動画(手術後)

術後1カ月
術後3カ月
術後1カ月

患者さんの年齢や症状などにより、回復には個人差があります。