腰痛、手足のしびれや痛み、歩行障害にお悩みの方へ

はじめに

脊椎外科は頚椎から腰椎までの背骨とその中を走る脊髄や馬尾神経を扱う診療科です。
椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊柱変形、骨粗鬆症性椎体骨折、脊髄腫瘍、脊椎外傷などが対象です。

当院の脊椎外科の特徴

当院では脊椎脊髄病外科専門医が、低侵襲かつ科学的根拠に基づいた安全性の高い治療を行うことを信念としております。
手足の痛みやしびれ、歩行障害などの原因を丁寧に診察し、様々な画像診断で精査します。 症状を緩和することにより社会復帰を目指して、治療方針を患者様と相談することで、適切な治療を提供します。

  • 日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医研修施設です。
  • 骨粗鬆症性椎体骨折に対する経皮的椎体形成術(Balloon Kyphoplasty®)のトレーニング施設です。
  • 側方進入腰椎椎体間固定術(OLIF®)のトレーニング講師が在籍する施設です。
  • 腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板内酵素注入治療(ヘルニコア®)の認定施設です。
  • 術中モバイルCTナビゲーションが可能なX線透視装置や術中脊髄神経モニタリング装置を完備しています。
2023年度 脊椎手術実績
手術名称 件数
脊椎固定術(後方椎体) 94
椎間板摘出術(後方摘出術) 57
脊椎固定術(前方後方) 51
脊椎固定術(前方椎体固定) 42
脊椎固定術(後方後側) 38
脊椎側彎症手術(固定術) 15
椎弓切除術 45
椎弓形成術 43
経皮的椎体形成術 41
顕微鏡下腰部脊柱管拡大減圧術 14
内視鏡下椎間板摘出(後方) 2
脊髄腫瘍摘出術(髄外) 2
脊椎悪性腫瘍手術 1
その他 16
脊椎手術合計 461

腰部脊柱管狭窄症

加齢とともに腰椎の椎体や椎間板に変性が生じます。そして脊柱管がその変性により狭くなって 中を走る神経(馬尾)が圧迫された状態を脊柱管狭窄症と呼びます。

神経が圧迫されるとその神経の担当する部位に痛みやしびれが出現します。腰痛はないこともあります。 また典型的な症状である間欠跛行や膀胱直腸障害が発生します。
歩いていると下肢にしびれや痛みが出現し歩けなくなります。少ししゃがんで休むと痛みしびれは軽快し歩けるようになりますが、 また同じくらい歩くと下肢痛が出現します。これを間欠跛行(かんけつはこう)と言います。

保存治療

軽度のしびれや下肢痛のみの場合には薬の内服で様子をみます。痛み止めや神経の血流れをよくする薬を使います。 内服では間欠跛行の症状が改善しない場合にはリハビリテーションやブロック注射を行います。
以上の治療は症状の軽減には役立ちますが、狭くなった脊柱管を広げることはできません。 間欠跛行が改善せず、根本的な治療は手術ということになります。
かならずしも全員が手術することはなく症状が軽快している患者さんは経過観察になります。
よく歩いて体力が落ちないよう心掛けてください。

手術治療

当院では除圧術のみで対応できる症例の場合は、顕微鏡視下片側進入両側除圧術を行っています。 棘突起や棘間靭帯、片側の筋肉を温存することができ、低侵襲な手術方法を採用しています。
除圧のみでは対応できない場合もあります。腰椎すべり症や分離症に伴い、脊椎の曲がりや不安定性が原因になった場合には、 除圧術のみでは症状改善を期待できないこともあり、不安定になってしまった脊椎を固定します。 この術式のことを脊椎固定術といいます。
脊椎固定術は、狭窄のために除圧を行わなければならない範囲の背中側に切開を入れ、 最初に神経を圧迫する骨や靭帯などを取り除き、除圧を完了します。 その後、固定する範囲の脊椎を骨癒合(こつゆごう)させ、安定させることが目的となります。
また、骨癒合の補助、早期離床、早期社会復帰を目的として、 主に生体親和性がある金属製のスクリュー(ねじ状のもの)、ロッド(スクリューとスクリューとを連結する棒)などのような 脊椎用インプラントを併用して、長期的に安定させることもあります。 個人差はありますが骨癒合するまでには、手術後約6ヶ月~1年間を要します。 最近では側方進入腰椎椎体間固定術(LLIF)という腰椎固定術の手術の中でも後方の筋肉、 椎弓に手術侵襲を加えない手術方法を採用しています。
欧米では約10年前より導入されていますが、日本では2012年より承認され、 技術習得専門医施設のみで行われています。当院では2013年より導入し、すでに多くの手術実績があります。

除圧術:顕微鏡視下片側進入両側除圧
PLIF:後方椎体間固定術
LLIF:側方進入腰椎椎体間固定術

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアは、骨と骨のクッションである椎間板が、神経の通り道に飛び出すことにより、 腰部や臀部の痛み、下肢の痛みやしびれ、下肢の筋力の低下などがみられる病気です。
当院では顕微鏡下ヘルニア摘出術(MD:皮膚切開、約3cm)や全内視鏡下ヘルニア摘出術(FED:直径8mmの内視鏡を使用)を施行し、 ヘルニアを安全に摘出、下肢痛やしびれを緩和します。
手術は全身麻酔で行います。
手術時間はME:約30分~1時間、FED:約1~2時間で、入院期間は5〜7日間程度です。

骨粗鬆症性椎体骨折

骨粗鬆症とは、骨密度(骨の量)が減って骨がもろくなり骨折しやすくなる病気です。 日本はその割合が世界の中で最も高い国のうちの一つで、約1000万人以上の患者さんがいるというデータもあります。
骨粗鬆症が原因で、ものを持ちあげたとか尻もちなどの軽い外力により生じた脊椎(せぼね)の骨折を骨粗鬆症性椎体骨折といいます。
主な症状としては、急激に発症し持続する腰背部痛が出現します。 特にベッドから起き上がると痛みが強くなり、座ってしまうと痛みが軽減することが多いです。
大きな外力がなく、いつ受傷したかわからないにもかかわらず椎体骨折が見つかることがあることから、 いつのまにか骨折と呼ばれたりします。
ほとんどの場合、保存療法から治療を開始します。硬性装具(コルセット)による外固定で骨折椎体の局所安静を図り、 薬物療法(疼痛コントロール)を行います。同時に適切な骨粗鬆症の治療を行うことが最も重要です。 中には腰背部痛が強く、保存治療で改善が得られない場合は手術加療を行います。

当院は経皮的椎体形成術(BKP)のトレーニング研修施設です。 BKPでは対応できない、脊椎の不安定性や変形が高度な場合、神経症状(麻痺)を伴う場合は、脊椎固定術を行います。当院では低侵襲脊椎手術手技(身体への負担が小さい手術の方法)を積極的に取り入れています。

経皮的椎体形成術 (BKP:Balloon KyphoPlasty)
低侵襲側方進入胸腰椎椎体置換術

成人脊柱変形(胸腰椎変性後側弯症)

成人脊柱変形とは、いわゆる「腰曲がり」で脊椎の側弯や後弯(弯曲)が極端に大きくなった状態です。 後弯を来す疾患には骨粗鬆症性椎体骨折やパーキンソン病など、様々な原因があります。 軽度の後弯では大きな問題が生じませんが、過度の後弯になると、強い腰痛や疲労感が出現し、 立位保持が難しくなります。脊柱管狭窄症を合併して下肢の神経障害を生じる場合もあります。 また、腹部が圧迫され胃食道逆流症による摂食障害を起こすこともあります。
成人脊柱変形に関する保存療法としては、ギプス治療を含めた装具療法、運動療法、 理学療法などがこれまで行われてきましたが、十分な治療効果が確認されたものは存在しません。 そのため、「腰曲がり」は「年寄り病」と老化現象の一つとして片づけられ、付き合っていくべきものと考えられてきました。
近年、側方進入椎体間固定術の普及や、脊椎固定材料の目覚ましい進歩に伴い、 成人脊柱変形患者さんへの手術治療が低侵襲化し、その手術成績も著しく改善がみられています。
しかしながら、成人脊柱変形患者さんは様々な全身合併症を有していることが多く、 手術には様々なリスクが伴うため、当院では十分な説明を行った上で手術を行っています。

術前
術後